風になりたい

ごきげんよう。ひとりです。

ナルトの母ちゃんがこんなことを言っていました。「母さんは女だからよくは分からないけど、とにかくこの世は男と女しかいないから、女の人に興味を持つことになっちゃう」だけど、変な女に引っかからないようにねって。息子を想う母の言葉です。どんな発言でも不適切になりがちな現代で、上手く適切に表現されているなと、個人的に印象に残っている場面。

私はこのブログで政治的なことを一切書きたくないんです。これは、「酒の場で宗教と政治と野球の話はするもんじゃない!」という精神と同じです。だから、性別に関わってくるような話も避けてきたんですが、今回は私が女性である故に経験したことを書きたいなと。まあ共感できる・できないというのに、性別は関係ないんですけどね。出来るだけ不適切にならないように話すつもりですが、「今回は女性の話をするよ」っていう予告をしておきます。

 

ねずみ色の話

ところで、ナルトの母ちゃんの言葉ですが、これも不適切になるのかなって色々考えちゃいました。「この世は男と女しかいないから」って言葉とかね。でも実際、カテゴライズするなら男か女かの二択に迫られるので、適切なのではないでしょうか。性別で悩んでいる多くの人も、身体的性別と精神的性別のミスマッチやギャップに悩んでいるのであって、“男と女”以外の性別があるってわけではなさそうです。そしてナルトの母ちゃんの言う通り、異性に興味を持つのは自然のことです。種を残すための生理現象なので、なかなか逆らえるものではありません。

最近でも何かと話題に上がる男女の二項対立ですが、なんだか主語が大きい気がしてうんざりします。男だからとか女だからとか、そういう問題じゃないよなって。でも確かに“傾向”というものはあって、”男と女だから生じる”という点は否めません。同性間より異性間で起こりやすい。だけど、それも確率の話であって、同性間でも起こることはあります。例えば、セクハラとかね。要は、白と黒では語れないグレーな話を白と黒で語ろうとするから、誰かに対して暴力性を帯びた表現になってしまうんですよね。これはどんなことにも言えるんですが、カテゴリーって前に付けるものではなく後に付けるものだと思うんです。男だから悪いのではなく、悪い人が男だっただけ。女だから優しいのではなく、優しい人が女だっただけ。もちろん傾向も関係するんだけど、まずはその人を一人の“人間”として見るべきかなって。まあ綺麗事っぽく聞こえますが、少なくともこのブログではこれを意識したいです。

 

亜麻色の髪の乙女

女性にとって髪は命と言います。私は、命というにはまあまあ粗雑に扱っちゃっているけど、頑張ってセットした日に強風が吹いて努力を無駄にされたときは「風死ね」と思います。学生の頃はTwitterで「風死ね」と検索していました。そう考えるとやっぱり、髪は自分の身体の一部であって、他人に侵されてはいけない領域にあるわけです。

そんな髪の毛をね、勝手に触ってくる男がいたんですよ。それまで他人に髪を触られたことなんてなくて、びっくりした。覚えていないだけで触られたことはあるのかもしれないけど、きっと許せる間柄だったんだと思う。勝手に髪の毛を触られるのが、なんて気持ちの悪いことなんだと、この時初めて知りました。お互い、友人の結婚式の場にいた。ただそれだけの、知り合い未満の男。怖すぎる。怖くて気持ち悪くて悔しくて、トラウマとなって今でもフラッシュバックします。この男ね、エスカレーターも真後ろに乗ってくるんですよ。一段も空けずに。距離感バグマンです。物理的にも心理的にも、こちらが一切許していない領域に土足で入ってくる。この男の足跡が拭えない汚れとなって、心にこびりついています。

この不快感は、痴漢とかセクハラとか、そういうものに値します。女性の髪の毛を勝手に触るのは女性より男性の方が多いし、逆に女性が男性の髪の毛を触ることなんてなかなかない。これが傾向ってやつです。でも、こんなことをしてきたのはその人が初めてだったので、傾向というのはやっぱり参考程度にしかなりません。それからというものの、この男の人がデブのボストロールに思えて仕方ない。ドラクエに出てくる、あの涎ダラダラのバケモン。最初は普通の人間に見えたんですけどね。太っているから気持ち悪いんじゃなくて、気持ち悪いことをしてきて気持ち悪い思いをしたから、デブのボストロールに見えるんです。嫌な思いをすれば、嫌な思いをさせてきた人間の、嫌な部分が、嫌でも目に付くようになる。大体のことはそんなもんですよね。

 

どす黒い感情

女性には月経というものがあります。こいつは本当に厄介です。神様は何を想ってこの機能を付けたのでしょうか。情緒が乱れていいことなんて一つも思い浮かびません。月経によって体と心に生じる不快な症状をPMSといいます。私自身もともとこれの症状が重い方で、受験生の頃は受験の日にどうか当たらないでくれと、何度も神様に祈ったほどです。

今まで生きてきた中で2回ほど、この世のものとは思えないどす黒い感情が発生しました。最初は大学一年生の冬。どうでもいいことや何でもないことに、殺意すら湧いてくる。二度目は大学三年生の冬。まるで悪魔に乗っ取られているかのよう。何のエンもないところから発生して、何のユカリもないところへと向かっていく。ブラックホールのように自分を含めたすべてのものを飲み込んで回る、恐ろしい感情です。

今思えば、PMDDというやつだったのかもしれません。PMDDとは、PMSのうちで特に精神面の不調が著しい状態をいいます。病名をつけて自分にそのレッテルを貼るのはできるだけ避けたいことだけど、どう考えてもあの感情は健全ではなかった。私の場合は症状の重さが毎回違って、PMDDと呼ばれる症状も数えられるくらいしか経験したことがありません。でも経験したからわかる。あれは自分でも理解できない感情です。自分で理解できないから、当然、他人も理解できない。理解できない言動をまき散らしている人間に触れて、祟られたり呪われたりしたときは、「この人はPMDDによって悪魔に乗っ取られているんだ!」って考えて祓うといいのかもしれません。もちろん病気を免罪符にできるわけではないけど、悪魔のどす黒い感情にあてられても、「自分も悪いのかも」と自責の念に駆られる必要はないってことです。そして実際にPMDDの悪魔に悩んでいる女性もたくさんいると思います。何でも許してあげられるわけではないけど、そういう苦しみもあるんだなと知ってあげられると、少しは何かが変わってくるかもしれませんね

 

 

最後に

男とか女とか関係なく、「一人の人間である以前に一人の異性として、あなたを見ていますよ」ってことが本人に伝わってしまえば、それは十分セクハラになりえます。辞めた会社にもそういうおじさんがいたんですけどね。いつもなら寮に帰るところを、具合が悪くて実家に帰ることになっていた日、大きなカバンを持って行ったんです。その帰り道でおじさんがね、「そんな大きなカバンを持っちゃって、彼氏の家に泊まるんでしょう?」ってしつこく言ってくるの。『不適切にもほどがある!』で阿部サダヲが言っていましたよね。「娘に言えないことを他の女性に言うもんじゃない」って。血の繋がった同胞の前で言えないことや出来ないことは、行動を起こす前にちゃんと吟味した方がいいです

 

後味が悪くなりそうなので、一旦、爽やかな風を吹かせてから終わりましょう。10年に一度あるかないかの、この上なく風が気持ちいい日ってありませんか。そんな風に初めて吹かれたのは、高校生の時だったかな。思わず脳内でTHE BOOMの『風になりたい』が流れたのを覚えています。「風になりたい」ってこういう気持ちなんだ!って。

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人間は強くはないけど、弱いからこそ、柔軟に適応していけるんです。以上、ひとりごとでした。/『小さな倫理学入門』山内志朗