イマジネーション1。

美しい日本語練習帳

ごきげんよう。ひとりです。出口先生の『美しい日本語練習帳』。思わず書き写したくなるような、美しい日本文学を紹介する本です。大学生の頃に買って一通り楽しんだのち、最近まで部屋の隅で眠っていました。久しぶりに開いたら、一つ目に紹介されている川端康成の『雪国』に魅了されてしまって、なかなか先に進まない。どうやら実際に雪国を手に取ってもらいたいらしく、出口先生の紹介文もあえて違和感が残るように謎めかしてあるんです。まんまと罠にはまりました。

「トンネルを抜けると雪国であった」で有名な雪国。美しいと思う以前に結構難しくてびっくり。多分一回目に読んだとき理解していなかったんじゃないかな。文体や単語は特に難しくないんです。むしろ余計な修飾がなくて、綺麗に引き算された文章。ただ、そのシンプルな情景描写ゆえに、場面を絵として想像するのに時間がかかる。紹介されている場面はほんの一節しかないのに、なかなか理解できなくて何度も読み返しました。でもやっと想像できた世界は本当に美しくて、改めて川端康成ってすごいなと思いましたね。

美しい日本語練習帳、出口先生が前書きで面白いことをおっしゃっていました。本書は“書き写し”に重点を置いていて、視覚で文学を堪能して欲しいらしい。「文明が発達するにつれて、言葉というものは“聴覚で捉えるもの”から“視覚で捉えるもの”へと変遷していった」と。確かに、これは日本だけに限らず、古くはヨーロッパで吟遊詩人が活躍していた時代もありますよね。今でも言葉を理解するのに、視覚が頼りになることがよくある。歌を聴いていて何て言っているかわからないと、すぐ歌詞を調べます。会話の中でも、漢字が解らないと意味が伝わらないってことが多々ある。普段は意識しないけど、目の力ってめちゃくちゃすごいです。思わずブルーベリーを食べたくなりますね。

 

娯楽も参考書のうち

でも、文字を読むことなんてほとんどの人が出来るのに、文字を理解することには個人差が大きく出ます。何が違うんだろうって考えてみたんですけど、“想像力”が要なんじゃないかと思い至りました。以前、情報量過多って話をした時、情報を理解するのに処理落ちのラグがあると言いましたね。これと同じです。

n-project.hatenablog.jp

じゃあ想像力ってどうやって育むのか。これも考えてみました。まず、想像力って理解力に直結すると思うんです。偉い学者さんたちが考える思考実験って、みんなが簡単に想像できるものを例に使っています。「アキレスと亀」とか、「テセウスの船」とか、「トロッコ問題」とか。取っつきにくい量子力学の「シュレーディンガーの猫」でさえ、猫と毒ガスといった、小学生でも想像できるものを用いています。想像が出来て初めて、理解につながるわけです。

話を戻します。想像力を育むには、まさに今、AIがやっていることと同じことをすればいいのではないでしょうか。世界を“見る”んです。いっぱいいっぱい見て、自分のものにするんです。今思えば、世界史の図録って結構大事だったんだなと気づきました。想像力は、“絵”として情報をインプットすることで育っていくんじゃないかって。まあ英語で言うとイマジネーションだし、イメージは画像って意味なので、言うまでもないんですけどね。だからね、漫画って「読書じゃなくて娯楽でしょ」って思われがちだけど、想像力を育むためにめちゃくちゃ重要なアイテムになるんです。アニメもゲームも然り。読書が苦手な子どもにはまず、娯楽から触れさせてみるのもいいかもしれませんね。

 

 

最後に。今回は中途半端に終わるひとりごとです。なんせ書きたいことがたくさんあるもんで、分割しようかなと。取り急ぎひとりごとまで。