健全なエゴイズム

もうすぐ春ですね。ごきげんよう。ひとりです。最近になって誰かが、空気に花粉と眠り粉を混ぜ込み始めたようです。鼻はくすぐったいし、目と喉はかゆい。そして暁を覚えることなく眠りこける。これはもう春ですね。今年も暖かくなるのが早いのかな。春と言えば、私の大好きな季節ですが、2年前の春はずっと雨が降っていた気がします。新入社員だった私の心を映すかのような雨模様。暗雲が立ち込めるってこういうことか!ってね。スラムダンクの山王戦で後半が始まる前も、暗雲が立ち込めていますよね。結構好きな描写です。

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恋文日和

恋文日和』、ジョージ朝倉先生の作品です。ラブレターを巡った短編集。可愛い話が多いです。素直じゃない人間たちの心の内を、赤裸々に晒してくれる手紙。純愛ってこういうことを言うんじゃないかと思わされます。差出人不明の手紙、FAX、交換日記、そして直球のラブレター。いろんな形のラブレターが出てくるの。誰かの心を動かしたいとか、何かを変えたいとか、みんな多かれ少なかれ期待するものがあって手紙を送ります。受け取った側も、相手の気持ちに応えようと一生懸命になる。まるで魔法のアイテムですね。私もこの作品を初めて読んだ時、触発されて当時好きだった芸能人にファンレターを送りました。まあ返事は当然来ないんですけど、伝わっているといいなって思います。ちなみに時々、「ラブとホラーは紙一重だよね」って感じの話も収録されています。ジョージ朝倉先生のことなので、きっと、江戸川乱歩の『人間椅子』を意識しているんだと思う。極端なことを言えば、ストーカーの心理も初めは純愛ですもんね。愛って超難関。

 

それにしても、人って、手紙になると思いの丈を直球でぶつけられるものです。オンラインが当然となった現代で、すごく趣のあるものだと思います。死に向かっている文化かもしれませんが、そんな時だからこそ、特別感がある。手紙って、頭を相手のことでいっぱいにして書きますよね。その瞬間は世界に自分と相手しかいないんです。なんて特別な時間。自分のために時間を割いてくれる人がいるって、その事実だけでも嬉しいです。やっぱりSNSじゃ得られない満足感があります。ぶっちゃけ、LINEや電話はいいから、交換日記や手紙でコミュニケートしたいものです。毎日のデジタルより、時々のアナログ。それくらいの距離感が理想的。

 

損得の感情

以前、FF9のジタンの話をした際、行動するかしないかの基準を決めたいと言いました。決めたいも何も、知らずのうちに決まっていました。自分ルールってやつです。天秤で量った時、デメリットがメリットを上回ったら離れる。これが私の基準。私はこの基準を特に人間関係に用います。人間って、良いところも悪いところも、両方持ち合わせているものですよね。誰かの悪いところが見えても、それは当然のことだし、良いところもたくさんある。どうせなら悪いところより良いところを見た方がいいじゃんって、中高生の頃は思っていました。性善説ですね。そう思っていても困らない環境にいました。でも大学に進むと、そうは言っていられなくなった。自分にとって居心地のいい場所を探すのはなかなか大変で。コミュニティの数だけ特性があるんです。当然のことなのに、初めて“合わない”って感覚を知りました。

やっとのことで合う場所を見つけたんですけどね、自分に合うコミュニティってだけで、その中には当然合わない人もいるわけです。まあでも、大学の友達なんてそんなにウェットな付き合いにはならないので、そこまで困っていなかったんですけどね。ただ、仲良くなるにつれて、自他の境界線って薄くなっていくじゃないですか。それで嫌な思いをすることがありました。親しき仲にも礼儀ありって言いますよね。仲良くなったからって何を言ってもいいわけではありません。たまにいるんですよ、仲良いことを免罪符に不愉快な言葉をかけてくる人。誰が聞いても明らかに不愉快な言葉なの。そんな人でも良いところはあるし、波風立てたくないので我慢していました。

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でもね、大学を卒業してある時、その人と付き合うメリットよりデメリットの方が大きいことに気づいたんです。だって、お金や時間や労力、あらゆるコストを払って会いに行っても、不快な思いをするんですよ。絶対におかしい。慈善事業じゃあるまい。人間関係を損得勘定で考えるなんて寂しい人間だなって、自分でも思ったことがあります。なんとなくいけないことをしている気分になる。だけどちょうどその時、『氷の城壁』って漫画を読んでタイムリーな場面に出会いました。「一緒にいて苦しいのに、でも良いところもあるしって、その人の一部や一瞬にしがみついていたら自分を消費していくだけだよ」って。解像度が高すぎて、私の話をしているのかと思いましたね。「あの時力になってくれたから」とか「優しくしてもらったことがあるから」とか、それだけの理由で我慢してまで付き合う必要はないんですよ。良いところがあるのは当然なんだから。それに一歩間違えれば犯罪に巻き込まれます。自分を大切にするのって、自分を大切にしてくれる人を大切にするってことです。私を大切にしてくれる人は、間違っても不愉快な言葉をかけるなんてことしません。不愉快な言葉をかけてもいいって思われているなら、こちらも、会って損する人って思っていいんです。

 

 

最後に。『チーズインザトラップ』っていう漫画が好きなんですけど、『氷の城壁』に何となく雰囲気が似ています。物語は全く違うんですけどね。リアリズム的な恋愛漫画ってところは共通するかな。どちらも面白いです。ひとりごとより。